関係が良好だからネガティブな事項を取り決める必要はないよね?をバッサリ切る。

契約

こんにちは。弁護士のタトです。

仕事をしていると、たまにこんなことを言われます。

「お客様と良好な関係なんだから、損害賠償だの、契約解除などネガティブなことについて内容を交渉したくない。」と。

これからお客さんと取引をしようと前向きな空気の中で、トラブルが発生した場合を想定した取り決めを話すのは抵抗があるということです。

「結婚」を例にとってみると、結婚する段階のものすごいハッピーな気持ちの時に「離婚した場合の財産分与はこうしましょう」「親権はどちらが持つことにしましょう」と話し合うようなものですので、ネガティブなことを話合いたくないという気持ちは理解できます。

しかし、だからといって契約交渉の過程で、ネガティブな事項について取り決めなくてもいいかというと、「そうではない」と断言できます。

今回は、なぜ契約書を締結する前にネガティブな事項についても事前に取り決めておく必要があるかについて語っていきます。

いつ合意するの?今でしょ

契約書をじっくり見るのは、2回

話を進める前提として、契約書をじっくり読むタイミングについて話たいと思います。

先に結論からお話しすると、契約書をじっくり読むタイミングは、2回です。

皆さんが不動産を売るビジネスマンだとして、土地を買おうとしているお客さんと、土地の売買契約を結ぶ段階にあるとします。

その時に、皆さんは、売る土地の情報、取引金額の支払い時期、土地の引渡しはいつかなどを確認するため、売買契約の内容をじっくり読むはずです。

そうこれが1回目です。

では2回目はいつでしょうか?

それは、物事がうまく進まずトラブルとなった場合です。

物事がうまく進んでいるときは、契約書を見る機会は殆どありません。

土地の売買契約の例でいえば、固定資産税の支払いがどちらにあるか、金額はいくらだったかを確認することはあるかもしれません。

しかし、お互い想定通りに物事が進んでいるときは、流れに沿って取引が進みますので、契約書を見る必要がないのです。

では逆に「予定されていた時期になっても、お金が支払われていない」といったトラブルが生じた場合はどうでしょう?

そう、このようなトラブルが発生した場合は、売買契約にはお金の支払い時期はいつと書いてあるかを確認しますよね。

それに加えて「予定されていた時期にお金が支払われなかったら、売買契約の解除、損害賠償請求はできるか」など、トラブルが発生したら何ができるのかも確認するでしょう。

つまり、契約書を熟読するもう一つのタイミングは、トラブルが発生したときなのです。

合意が可能な時期

契約書をじっくり見るタイミングを考えると、合意が可能となる時期も見えてきます。

ここでいう合意が可能となるとは、契約書の内容を交渉できることをいいます。

契約書の中身を交渉しているということは、当然契約書の内容を吟味している段階ですから、契約書を熟読している状態でしょう。

そうすると、交渉段階でネガティブな事項について取り決めない、という選択肢を取った場合、熟読するタイミングはトラブルが発生したときになるので、トラブル発生時にネガティブな事項の合意に向けて交渉するということになります。

しかし、実際に交渉はまとまるでしょうか?

すでにトラブルが発生している状態です。

揉めている相手と何か決め事をするということ自体が困難でありますし、ましてやトラブルが生じた際の取り決めとなれば、互いに自分たちの有利になるよう主張しあうことも想像に難くないです。

つまり、トラブルが発生した段階になって初めてネガティブな事項を取り決めるということは事実上不可能と言えます。

したがって、ネガティブな事項を合意するためには、契約書をじっくり読むもう一つのタイミング、契約締結前の良好な関係である段階にせざるを得ないということになります。

最後に

経験上、訴訟の大半の理由が、トラブルが起こった時の取り決めをしなかったがために起こるものです。

事前にトラブルが発生した場合の対応を合意していれば、裁判になったところで、その合意に基づいて判決が下されることになる可能性が高いため、だったら裁判にはせず、当事者間の交渉(=和解)で解決が図られることが多いからです。

つまり、トラブルが生じた場合の対応というネガティブな事項も取り決めることで、訴訟を回避できる可能性は飛躍的に高まり、訴訟費用や解決までの時間を大幅に削減することができるというメリットもあります。

これはビジネスの世界に限らず、日常生活においても同様のことがいえます。

「良好な関係であるからネガティブな事項を取り決める必要はない」ではなく、「良好な関係である今だからこそ、しっかり話し合いネガティブな事項も取り決めていく」こういう心構えが必要ではないでしょうか。

ここまでご覧いただきありがとうございます。ではまた。

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